なんにでもあう

たきたて白米

「暇な時、何してるんですか?」という質問に「家で1人で踊ってる」と答えた結果

「先輩は暇な時、何してるんですか?」

 

と、久々に会った大学時代の後輩に聞かれたのは、丸1日一緒に過ごして一通り近況報告もくだらない与太話も終え、夕飯を食べ終わろうとしている時だった。

私は、後輩のスラッとした身体とサラサラロングのストレートヘアは全然変わんないな〜なんて、ぼんやりと考えていた。

 

もう話も尽きて世間話に移行しようとした後輩の一手に、私はこう切り返した。

 

「あ〜最近は、家で1人で踊ってるかな」

 

私は、大真面目に答えた。だって、事実だし。

なんで踊るの?と、思った方はこの記事(なんでもないことに救われている - なんにでもあう)を読んで欲しい。

 

「え?踊ってるんですか?

「うん」

家で?1人で?

「そうだよ」

 

なんでそんなことするんですか?

 

後輩は目を丸くして、これまた大真面目に質問してくる。

本当になんで?と、思っている顔だった。

 

「なんでって言われても…」

 

どんな風に踊るんですか?

 

混乱している割に矢継ぎ早に質問してくるな…

 

「うーんと、イメージでいうと、インド映画みたいな感じかな

 

「インド…映画…」と繰り返しながら、後輩が震えだす。

我ながら想像しやすい例を出してしまった。でも、事実だからしょうがない。

 

「うん、インド映画…とはいっても、我流だから、ただ一心不乱に尻を振ったりしてるだけだけど

 

「尻を……」と繰り返して、ついに後輩が吹き出してしまった。

 

先輩!ひどいです!私、こんなつもりで『暇な時、何してるんですか?』って聞いたんじゃありません!」

 

ヒーッヒーッと笑いを堪えようとすればするほど面白くなる呪いにかかり、後輩は私を責めてくる。

 

「え〜!?でも、事実だし…」

 

「私はもっと『本を読んでるよ』→『どんな本読んでるんですか?』みたいな展開を想定してたんですよ!それが…家で…フッ…しかも、ひ、1人で……踊ってる、なんて…!!…ブハッ…ヒーッヒッ…」

 

そんな笑わなくてもよくない?

 

彼氏さんは、何て言ってるんですか?

 

「え?いや、彼氏にわざわざ『私、暇な時、家で1人で踊ってるんだよね〜』って言わなくない?」

 

「じゃあ、なんで私には言ったんですか!ブフッ…」

 

ピンポイントで『暇な時、何してるのか』って聞いてきたから、事実を言っただけだよ」

 

私、すごい質問しちゃったんだ……

 

後輩は腹を抱えながら、涙を拭っている。

「インド映画みたいに…尻を…」とうわごとのように呟いては吹き出している。

 

どんな、どんな音楽で…踊るんですか?

 

そんなに笑って辛そうなのに、コミュニケーションを諦めないのがすごいよね。ランダムで流して、その曲に合わせて踊るよ」

 

その答えに後輩はまた吹き出す。もうなんでも面白いゾーンに入ってしまっているな…

でも私は、この後輩のこういうところが好きなのだ。

 

「今度、Cちゃん(後輩の名)もやってみるといいよ」

 

「え、絶対やりませんよ

 

こういうところも好きなのだ。

 

「あーあ、笑った〜先輩のこういうところ本当に好きです

 

「今度踊って見せてくださいね」に「やだよ」と返しながら、私の口元は少しニヤついていた。