小学5年生の時にクラスの"おすすめの本紹介"に2回『もものかんづめ』が登場した話
『ちびまる子ちゃん』が全巻実家にあり、小学5年生の時にクラスの"おすすめの本紹介"に『もものかんづめ』と書いた私は、寂しくて少し泣いてしまった。
— 白米うまいうまい (@hakumaiumaaai) 2018年8月27日
『ちびまる子ちゃん』との出会いが連載誌の『りぼん』だったか、日曜夕方放送のTVアニメだったかは、よく覚えていない。
でも、まるちゃんと同じ小学3年生の頃に激ハマりしたのは覚えている。
私は、父の仕事の都合で転校を2度経験しているのですが、小学3年生はちょうど2度目の転校をして父方の実家に引っ越したタイミングでした。
その実家というのは、祖父母・曾祖父の住む一軒家。
加えて、母・姉のいる私は、まるちゃんの境遇にものすごく親近感を覚えました。
なによりも、ぐうたらな性格や絵を描くのが好きなことにものすごく共感して、もはや私は"まるちゃん"なのでは?と錯覚を起こしていたほどでした。
余談ですが、『ちびまる子ちゃん』って登場人物全員にどこか共感する部分があって本当に皆"生きている"感が尋常じゃないんですよね。"生(せい)"の匂いが強い。
ハマってからは、1冊ずつ時間をかけて買い集め、私の本棚には『ちびまる子ちゃん』が全巻揃いました。
その頃の私は、今よりも随分読書家だったので、作者のさくらももこ先生がエッセイを出していると知って、すぐに「欲しい!」と思いました。
というのも、『りぼん』などの連載誌掲載時に広告が入る"柱"部分にコミックス版で書き足される作者のエッセイ的なエピソード紹介が大好きだったためです。
なお、ここで思い浮かべているのは別作家さんのコミックスなので、『ちびまる子ちゃん』がそうだったかは思い出せません。全巻実家にあるのが悔やまれる…
でも、さくらももこ先生のエッセイなら面白いに違いないと確信し、本屋へ買いに行ったのが『もものかんづめ』でした。
内容は、案の定面白く、夢中で読みふけりました。
他の方が多く言及されている"実際のおじいちゃん友蔵と真逆エピソード"もこの本に載っており、私も印象に残っているエピソードのひとつです。
その後も『たいのおかしら』『さるのこしかけ』と順調に読み進めて、小学5年生になる頃には『神のちからっ子新聞』に手を出して「私にはまだ早かったな」と思っていました。今でもまだ早いと思います。
そんな小5の時のクラスには、"おすすめの本紹介"という日直の時だったかにその番が全員に回ってくるという制度がありました。
朝の会で紹介するために、本の表紙を真似して描いたイラストやおすすめポイントをまとめたA4サイズの"おすすめカード"を作成し、紹介が終わるとそのカードが一定期間、教室の後ろに掲示されることになっていました。
ちなみに当時のクラスや所属していた学年、私の記憶では、男子は担任の先生に輪ゴム鉄砲を繰り返し発射して激怒させ授業が中断・女子は「飼い犬を洗濯機で洗った(真偽不明)」というサイコパス自慢をしてくる等、クソガキ界のアウトレイジ状態で、先生が泣きながら指導していた姿をめちゃめちゃ見たんで、たぶん半分学級崩壊していたんだと思います。
思い返しても本当に苦い思い出が8割以上を占めていて、全く好きじゃなかったんですが、そんな人たちの前で発表しなければならない訳です。
なめられたくもないし、理解されたくもない。
でも、本当に好きな本を紹介したい。
そんな思いから浮かんだのが『もものかんづめ』でした。
当時のクラスで読書が好きと言っているメンツを思い浮かべても、ハリーポッターとかを読んでそうだったので、これならいける!と確信しました。ちなみにハリーポッターもめちゃめちゃ好きです。
かくして、私は『もものかんづめ』でおすすめの本紹介をし、しばらくそのおすすめカードが教室に掲示されました。確かおすすめポイントとして、1番好きなエピソードを紹介したと思います。
発表を聞いたクラスメイトの感想は「面白そうなので、読んでみたい」とか「表紙の絵がとても上手に真似して描けていてすごい」という内容に一切言及しないものだったので、勝った!!と思いました。
私の中では、私の好きなものを「面白そう」と思わせただけで満足でした。
誰も読んでなくてよかった。
私の好きなものが否定されなくてよかった。
それからしばらくして、クラスで1番バレーボールが上手いN君のおすすめの本紹介の日。特に読書好きでもないN君のおすすめの本がなんと『もものかんづめ』だったので私に衝撃が走りました。
今考えると、あんなに読みやすいエッセイ、読書が苦手な子だって読むだろうと察しがつくし、言ってないだけで読んでいる子はたくさんいたのかもしれません。
でも、そのN君の紹介は、好きなエピソードまで私と一緒だったと記憶しています。
絶対コイツ読んでない!
手抜きで私のをパクったんだ!
本当は、デルトラ・クエストしか読んでないくせに!!
すみません、今のは面白そうなのに"デルトラ・クエストは男子の本だよね"という同調圧力に屈していた当時の私の僻みです。あのキラキラな装丁、まじカッケ―し、魅力的だよね。
そんな僻みもあって、当時の私は素直にN君がおすすめの本を読んでくれたとは思えず、なんなら好きな本を横取りされたような気がして腹が立っていました。
なんでよりによって私のさくらももこを…
他にいくらでも男子が読んでそう、かつパクったことがバレなそうな本紹介がたくさんあったのに!!
そう思ってものすごく勝手に傷ついていました。
後日、友達から「N君、本当に朝読書で『もものかんづめ』読んでるよ」と言われて本当に読んでいたことが発覚します。
しかもその友達から「好きな子のおすすめだから読んでるらしい」と聞かされました。
確かにN君は、皆の前だとそっけない態度なんですが、たまたま2人になることがあると体育での私のヘマを「あれはしょうがない」と励ましてくれたり、雨の日の帰りに偶然玄関で遭遇して「傘ある?」と聞いてくれたりしました。傘は持っていたので、別々に帰りました。
えー!!あれってそういうことか!と、少し納得しつつ、実際それ以上のことはなかったので、本当にN君の好きな子が私だったかはわかりません。
でも、好きだったんだとしたら、好きな人のおすすめの本を読んで皆の前で同じ本・同じ話を好きだとアピールするってかなりすごいな、と他人事のように感心してしまいました。ものすごい偏見ですが、きっとフラッシュモブとか抵抗ない人なんだろうな。
それでも普段読んでないジャンルの本をちゃんと本屋で買って読むって、案外なかなかできないよな。だとしたら、私を経由して、さくらももこのエッセイを好きになってくれたことがなんだか嬉しい。
さっきは、デルトラ・クエストしか読んでないって言ってごめんね。
更にその1ヵ月後、彼は朝読書で『たいのおかしら』を読んでおり、しっかり"さくらももこファン"に育ったのでした。
私もまた読み返したいな~ずっと大好きだ。
『永沢君』も『ちびしかくちゃん』も持ってます。
辛かった学校生活を少しでも笑えたのは、漫画やエッセイを通して"さくらももこの視点"があったからかもしれません。
少なくとも"おすすめの本紹介"の時、私の中に『もものかんづめ』があったことは今でも救いです。
本当にありがとうございました。